恵一は憮然とした表情。
母親も納得していないような顔つきだ。
「あなた、そんなこと私にも相談してくれなかったじゃないの」
「お前は絶対に反対すると思ったからな」
「そりゃあ、反対もします。あんな人のお金で建っていると思ったら気分が良くないわ」
再び嫌悪感を露にして食って掛かる母親。
「やめなさい。由紀さんに失礼だ」
「でも……」
「お前だって、人の親ならわかるだろう? 自分の子に何かしてやりたい。通帳が送られてきたとき、添えられた手紙からは松井さんのそんな気持ちが痛いほど伝わってきた」
「だからって……」
「彼女だって、自分の意思で恵一を手放したわけじゃないんだ」
夫妻が言い合いを続けている。
私はそんな二人を前に、込み上げてきた涙を止めることができなくなっていた。



