すると、今まで渋い顔をしていた母親が遠慮がちに声を出した。
「あなた、亡くなったって言ったわね」
「ええ。昨年の夏に、事故で」
「そうだったの……」
母が亡くなったからこそ、今ここでこうしている。
酷なきっかけではあるが、恵一との出会いは彼女の死なくしてありえなかった。
「私は……恥ずかしいくらいに何も知りませんでした。つい最近まで、自分自身が母の実子でないことも知らなかったんです」
精神的に未熟で幼かった私は、傷つかないよう守られていた。
弱くてわがままな私を、家族が嘘と隠蔽を重ねて包んでくれていた。



