「恵一さん?」
「イマイチ」
「恵一くん?」
「お、いいね」
「恵ちゃん!」
「ぶはっ!」
恵一が吹き出して笑い出す。
そのリズムで体が揺れ、腕の擦り傷が少し痛む。
「恵ちゃんって、ははっ、そんなガラかよ」
「ほら、もう! マスターはマスターです!」
そう言って恵一の体を左へ転がし起き上がる。
袖をまくって腕のかさぶたを確認し、左足のギブスを爪で軽くコンと叩いた。
恵一は転がったまま、まだ笑い続けている。
デカくてロン毛で無愛想。
確かに恵ちゃんなんていうガラではない。
「由紀」
「何ですか? 恵ちゃん」
わざとそう言うと、また笑いそうになっている彼に体ごと引き寄せられた。
鍛えられてムキムキな腕は見た目通り力持ち。
軽々私を組敷くと、いつかのようにニヤリと笑む。



