「ねぇ、マスター」
「ん?」
久しぶりにまともに顔を見る。
色白で、はっきりした顔立ちで、大きな目は少し茶色い。
「私、確かに始めは何とも思ってなかったんですけど」
いったん言葉を切る。
胸がいっぱいの気持ちが一気に口元へ押し寄せてこて、上手に口に出せない。
「本当はいつの間にか、自分でも気付かないうちに、マスターのこと好きになってたんです」
悪者だと決めつけていた。
母の仇だと思っていた。
でも、違った。
美味しいご飯を作ってくれた。
優しく温めてくれた。
私は間違いなく、あなたのおかげで幸せだった。
好きになんてならなければきっと楽だったのに、気付いた時にはもう手遅れで、気持ちをかき消したくても無理だった。
一緒に過ごした時の思い出は、何よりも美しい宝物。



