「よし」

私は一旦息をついて、思い切ってボタンを押した。

ピーンポーン……

呼び鈴は一度だけ鳴った。

恵一が降りてくるまでには暫くかかるだろう。

ドクッ ドクッ ドクッ

嫌に心臓が暴れだす。

トッ トッ トッ トッ

階段を降りてくる音が聞こえた。

いったんインターホンで応答があると思っていたから、いきなり顔を見る心の準備ができていない。

ヤバい。

心臓がはち切れそう。

カシャン

か、鍵が開いた!

カチャ

扉も、開いた……!