私の物心がついた頃には、すでに母と一緒の生活が始まっていた。
私は母が大好きで、甘えん坊だった。
雄輔は泣き虫で、私のことが大好きだった。
一度失敗を経験していた父は母を大事にしていたし、家事や育児も進んで手伝うようにしていた。
どこからどう見ても幸せな一般家庭だった。
しかし母の心の中では、大きな闇がくすぶり続けていたのだ。
私や雄輔に微笑んだり叱ったりしながら、大きな罪悪感と闘っていた。
それはもちろん、恵一を捨ててしまったという大きな罪である。
「ある日、突然だった。仕事から帰ると紀子が泣いていたんだ」



