私は流れる涙を手の甲で拭い、グスッと鼻をすすって立ち上がった。 「さよなら、マスター……」 呟いて、扉の鍵をかける。 もうこれ以上何も悪いことがこの家に入ってこないように。 悪いことさえ入ってこなければ、特別に良いことが入ってこなくてもいい。 彼を傷付けた償いとして、私の幸せ全てを彼に与えたい。 ねぇ、お母さん。 あなたもきっと、同じように思ってお金を振り込んでいたんだよね。