目の前に、恵一の顔。
あと少し近付けば触れ合える距離。
大人しく向かい側にいてくれればよかったのに、わざわざ触れに来るからドキドキする。
どうしたい、だなんて。
「わかりません」
俯いて答えれば大きな手が私の顔を包む。
今はそんなこと考えたくないのに、強制的に視線を合わせられる。
恵一は至極真剣な表情をしていた。
「聞き方が悪かったな」
眉間にシワが寄って、少し怖い。
「俺のこと、どう思ってんの?」
「え……?」
「お前、俺のこと探るために店に来たんだろ? 俺のこと探るために俺と付き合ったんだろ?」
「それはっ……」
そうだけど。
「気持ちもないくせに、好きだの抱けだの簡単に言って……処女だったくせに」
彼の手にぐっと力が込められる。
ねぇ、マスター。
あの日あなたは、どんな思いで私を抱いたの?



