店内と違い、白っぽくて冷たい感じのする厨房。
その脇にある扉を開けると、2階に繋がる階段がある。
恵一の温かい手に引っ張られるようにしてその階段を上った。
上りきると靴を脱ぐ玄関のようなスペースがあって、それから更に扉を開けると恵一の暮らす住居がある。
淡い照明に照らされた彼の部屋は、開放感があって色の少ない、シンプルな部屋だった。
恵一は私を部屋に入れるなり、乱雑に手を引いてベッドへと引きずり込み、転がす。
そもそも男の部屋に上がりこむのが初めてである私は、これから訪れるであろう未知の諸々に少なからず恐怖を抱いた。
恵一は私に覆いかぶさり、大きな目を見開いて告げた。
「やめるなら、今だぞ」
最後の忠告だ。
唇が触れそうな距離でそう言われると、蛇に睨まれた蛙のように身動きが取れなくなった。
男の人って、ここまで近付くと、こんなに大きいのか。
ドキドキする。
恐怖とか緊張とか、そういう意味で。



