何てことのない家族の談笑を、線香が燃え尽きるまで続けた。
父がこの部屋にいることに慣れない。
母の生前は、彼がうちに上がり込むことなんてなかったからだ。
線香の煙が落ち着き、そろそろ出掛けようかという雰囲気の頃。
「由紀」
「なに?」
「お前の心の整理がついたらでいいんだがな」
「……うん」
「いずれはこの部屋を引き払って、うちに来なさい」
「うん、わかってる」
そう答えると父は安心したように笑った。
母が亡くなって以来、この部屋の家賃は父が払ってくれている。
どう考えても不経済だし、ここにいたいというワガママをずっと通せるとも思っていない。
父のマンションには、ちゃんと私の部屋が準備されているのも知っている。
母不信に陥っている今が、ちょうどいいタイミングなのかもしれない。



