私は帰宅するなり雄輔の言葉も聞かずに自室に入った。
着慣れないワンピースも赤色のコートも脱がずにベッドに潜り、ただひたすら恵一の母の言葉を噛み締める。
そして知らなかった母の過去と恵一が兄である事実に押し潰され、眠ることも出来ないまま涙を流し続けた。
汚れてしまった自分の体に触れてしまうから、着替えることすらしたくない。
母の遺影が見えるから、この部屋を出たくない。
母はずっと、恵一を捨ててしまった十字架を背負いながら私を育ててきた。
私に笑顔を向けたり叱ったりしながら、恵一のことをも思っていた。
両親が離婚しても、兄弟が離れることは少ないと聞いたことがある。
そして、母親が引き取るケースが多いとも。
母が雄輔を引き取らなかったのは、きっと捨てた恵一をもろに重ねてしまうからだ。



