恵一の母は一瞬ポカンとした表情を浮かべた。
何も知らないのだろうか。
と思ったのも束の間、彼女の顔はみるみる変化していった。
「松井、紀子……ですって?」
「はい」
息子の知り合いに向ける穏やかな顔は、眉から順につり上がっていく。
穏やかな話にならないことだけは、この時点で理解できた。
「あなた、松井紀子の娘なの?」
「はい」
彼女の声は低く震えていた。
怒りに耐えるような顔。
今にも爆発してしまいそう。
と思っていたら、本当に爆発してしまった。
「いい加減にしてちょうだい!」
突然の大声に肩がビクッと上がり、庭の木にとまっていた鳥もどこかへ羽ばたきだす。



