ピーンポーン……
ピーンポーン……
チャイム音は我が家のものよりもずっとゆっくり鳴り響く。
コツコツコツコツコツコツ……
女性の靴音がこちらに近づいて来るのが聞こえる。
人が、来る、
カチャッ……
立派な門を埋めるように取り付けられた木製の扉は、予想よりずっと軽い音を立てた。
現れたのは中年というよりは初老の女性だった。
きっと母より10は年上だと思う。
私と同じくらいの身長で、オレンジ系の茶色に染められたショートカットが目を引く。
女性は怪訝の表情で
「どちら様ですか?」
と上品な声を出した。
「あのっ……その……」
頭が真っ白とはこのことを言うのだろう。
電車の中で必死に考えていた言葉が何も思い出せない。
挙動不審な私を、この女性……恐らく恵一の母親はより一層怪訝の表情で見据える。



