さあ出掛けるか、と一歩を踏み込もうとしたとき、
それを邪魔するように雄輔の声がした。
「なぁ、姉ちゃんさ」
雄輔は真剣な表情だ。
心配をしてくれていることはわかるが、私だってナーバスになっているから鬱陶しい。
「なによ」
「親父が言ってたんだけど」
勿体ぶられて苛立ちが募ってゆく。
「だから何なのよ」
「この部屋引き払って、一緒に住まない?」
ああ、その話。
いつか言われると思っていた。
母が亡くなる前も、父はずっと私を引き取ろうとしていた。
母の方が好きだった私は逐一それを断っていた。
「ずっと女二人で生活してたのよ? 今更男二人とどう暮らして良いかわかんないっつーの」
私はそう言い放ち、握り慣れたドアノブを回した。



