それは匠先輩がいない日の閉店後のこと。
「マスター」
「なに?」
「好きです」
もちろん本心ではない。
本心だったら、こんなことは言えない性格だ。
恥ずかしい話、私はこの年になるまで誰とも付き合ったことがない。
正真正銘の処女である。
「は?」
私の決死の告白に、恵一は眉間にしわを寄せた。
意味がわからないという表情。
「だから、好きなんです。私と付き合ってください」
「それ、本気で言ってんの?」
恵一は縛っていた髪を解きながら呆れた声を出す。
乙女の告白を何だと思っているんだ。
もちろん嘘の告白ではあるけれど、もっと言い方ってものがあるでしょう。
「本気です!」



