「もういいよ……手離して。教室戻ろう」

 ため息混じりにあたしは言った。


 でも黒斗は離してくれる気配を見せない。

「……黒斗?」

 聞き返すと、顎を掴んでいた手の親指で唇を撫でられた。


「っ――!?」

 あたしは突然の行為に驚いて目を見開く。

 驚きの次には恥ずかしさが込みあげてきて、すぐに顔が真っ赤になる。


 なななな何!?


「唇……ファーストキス守る必要なくなったから解禁ってことでいいよな? これからはもう一つの方の報酬も頂くぜ?」


 もう一つの方の報酬?


 一瞬疑問に思って、はっと思い出す。


 報酬って言ったら例の勝負のことじゃない!?


 助けてもらった数だけキスマークをつけられるか、あたしから黒斗にキスをするか。

 今まではキスマークをつけられた事しかない。

 つまり、今日からはあたしが黒斗にキスする報酬もしなきゃならないってことだ。


 今まではファーストキス守ることばっかり考えていたから、あたしが黒斗にキスするってこと、よく考えてなかった……。

 でもよく考えたら、それって凄く恥ずかしいし勇気いるよ!