「高志、ちょっと」


 翌日の朝、登校してすぐにあたしは高志を呼びつけた。

 高志も呼ばれた理由は分かってるみたいで、何も言わずについてくる。


 黒斗には教室で待っててと伝え、朝は誰も来ない階段の踊り場に行く。


 そこで高志と向かい合って、何て切り出そうかと考えていたら高志の方から話し始めた。


「昨日のこと……だよな?」

「……うん。その……あれ、どういうつもりだったんだ?」

 何となく、“キス”という言葉を出すのが嫌で回りくどい言い方で聞き返した。

「どういうつもりも何も……したいからしたんだ」

「いや、だからどうしてしたくなるんだよ。オレ、男だぜ?」

 ここで“女だろ?”と言われないか少しハラハラしたけど、それは思い過ごしだった。


「んなこと分かってる。でも、好きになっちまったんだから仕方ねぇだろ……」

 高志はそう言ってあたしから視線を逸らした。

 照れているのか、顔が赤い。


 ……高志が乙女だ!?


 ちょっと可愛いとか思ってしまった。


 いやいやちょっと待て、可愛いとか思ってる場合じゃないでしょうあたし!?