深夜にほど近いころ、俺はふとのどが渇いて談話室にある自動販売機でジュースを買おうと部屋を出た。

 談話室について、何にしようか少し迷い結局お茶にした。


 部屋に戻らずそこで開けて飲む。

 程よい苦味とすっきりとした後味に、俺は一気に半分まで飲んだ。

 そしてフゥ、と息をつきながら今日の事を思い出す。


 友のファーストキスを高志に奪われてしまったのは失敗だった。
 もっとじっくりいたぶってから俺がいただこうと思ってたのに……。


「まあ、すぐに濃厚なのやったけどな」

 呟いて、部屋でたっぷりと味わった友の唇を思い出し、俺はニヤリと笑った。


 柔らかい唇と舌。

 時おりもれる小さな声が、欲情を煽(あお)った。


 そして何よりあの表情……。


 頬は上気し、程よく赤い。

 涙が溜まった目は弱々しく潤み……。

 濡れた唇は妖艶につやめいていた……。


 腕の中にすっぽりと収まる小さな身体も、俺の中の男という獣を呼び覚ますには十分だった。



 本当は少し、あのまま最後までヤってしまおうかとも思った。

 でも、それをしなかったのは……。



「ん? 黒斗かい?」

 談話室の入り口から突然声がした。


 見るとそれは蓮先輩だった。

 財布を持っているところを見ると、蓮先輩も飲み物を買いに来たらしい。