「だからあんた、来年度新入生のジュエルになって頂戴」

「はあぁ!!??」


 ちょっと待って。
 ジュエルって綺麗で可愛い子がなるってさっき言ったよね?

「このあたしの姿を見てよくそんな簡単に言えるわね!?」
 あたしはまた声を荒げた。


 今のあたしの姿。

 髪はショートで栗色。
 それはいい。

 でも黒ぶち眼鏡に中学のジャージ姿。

 綺麗や可愛いどころか、オシャレの『オ』の字すらない。

 そんなあたしに綺麗で可愛いジュエルってやつになれってか!?
 冗談でしょう!


「大体男子校にもぐりこんだりして大丈夫なの? もし何かあったら――」

「ああ、それは大丈夫」

 あたしの言葉の途中でお母さんは先に答えた。


「ジュエルには一般生徒の中から、一人事情を知ってる人をナイトにして守らせてるから」

 その完璧さにあたしはむしろ呆れたため息をつく。

「はぁ……ずいぶんと良く出来た制度ね……。分かったわよ。どうせ逆らったって無駄なんでしょう?」


 あたしはほとんどヤケクソの状態で承諾した。


 そのあとはもうお母さんの指示するままに準備をして、日々が過ぎていく。

 雪さんと怜さんにも久しぶりに再会して励まされ、まあ、なんとかなるだろう。と思えるようになった。


 実際何とかなるもので、特に怪しまれずに今もこの男子校・聖石学園に通っている。




 二週間経ち、不安もなくなってきた。


 このまま順調に生活出来るだろうと、このときのあたしは疑いもしなかった。