「じゃあちょっと行ってくるよ……って高志? 何機嫌悪くなってるんだよ?」

 高志に視線を向けると、あからさまにムスッとした顔をしていた。


「お前さ、その笑顔良くするけどさ……や、まあいいや。さっさと行ってこいよ」

「あ、ああ」

 何なんだろ?
 高志、やっぱりどこかおかしいよね?


「それともオレついてってやろうか? 黒斗いねぇし」

 ニヤリとからかうように言われ、あたしはいつものように返した。

「は? いらないよ!」


 ……あれ?
 やっぱりいつも通り?


 あたしは微妙に不思議に思いつつも、とりあえず田代という先輩の所へ行く事にした。



「すみません。お待たせしました」

 あたしはさっきクラスメイトが指差していた人物にそう言って近付く。

 田代という先輩はごくごく普通の生徒に見えた。


「あ、いや。それはいいからさ、あんまり聞かれたくない話があるんだ。ついて来てくれ」

 そう言うと、田代先輩はあたしの返事も聞かずに歩いて行ってしまう。


「え? ちょっと!?」

 呼び止めても足を止めないため、仕方なくあたしは田代先輩について行くしかない。


 全く……なんなんだ?



 このとき素直について行ったあたしは、完全に油断していたんだと思う……。