そこで一度言葉を切ったお母さんは、「もう一つは」と真剣な表情で言った。

「今年入学させれる女タレントがいないからよ」


 ……。


「は?」
 どういうこと?


「実はあの学園にはね、特殊な制度があるの」

 呆けるあたしをそのままに、お母さんは解説を始めた。


「各学年に一人、ジュエルと呼ばれるアイドル的な人がいるのよ」

「はあ」
 あたしは仕方が無いので適当に相づちを打つ。


「そのジュエルは綺麗で可愛い子が選ばれて、他の生徒から姫のように扱われるの」

「……うん」

「で、そのジュエルってのは皆ウチの事務所の女タレントなのよね、実は」

「はあ…………はあ!?」
 あたしは同じように相槌を打ってから、驚きの声を上げた。


「つまりその子達には、『男装して、ジュエルとしての役目を立派にこなせ!』っていう指令を出してるの。あ、もちろん女だってバレたら失格ってことで別の指令を最初からやらせてるわ」


 相変わらず無茶な指令を出すものだ。


「とにかく、そのジュエルは必ず各学年に一人いなきゃならないの」

 そう言ったお母さんに、あたしは嫌な予感がした。


 まさか……。