こんな事でファーストキス奪われたくなんかない。

 だからといって、33箇所もキスマークつけられるのも勘弁だ。



「ま……マジでどうしよう……」

 ちょっと、本気で泣きたくなる。



 そのままの状態で、なんとか回避する方法は無いものかと考え込んでいるとドアがノックされた。

 ビクゥッ! と、必要以上に驚くあたし。


「友? お・れ……入るぜ?」

 黒斗の声が聞こえた後、ドアノブがガチャガチャと鳴った。


「…………開けろよ」

 ドアを隔(へだ)てて低音ボイスが耳に届く。

「うぅ……イヤデス……」


 ゴメン、マジ勘弁。

 負けるもんかって思ったけど……今黒斗と会うのだけは本気で怖いんです!


 どうしても開けないあたしに呆れてか、黒斗のため息が聞こえてきた。

「仕方ねぇなー。じゃあこのままでいいから、俺の言う事ちゃんと聞いてろよ?」


「へ?」

 あたしはマヌケな声を出す。
 腹黒な黒斗にしてはずいぶんとあっさり引き下がる……。

「今日あたしが負けた分の報酬、話聞くだけでいいの?」


 この三日間で黒斗の腹黒Sを思い知っていたあたしは、疑わしげに聞いた。

「だからそう言ってんじゃん。ちゃんと聞けよ?」

「う、うん。分かった」


 ちょっと納得いかないけど、実際それですむなら願ったり叶ったりだ。



 でも、何を話すんだろう?