オレは今すぐ友の姿を確認したいのを我慢して、教室で待ち続ける。


 友に恋なんてありえねぇ。
 いつも通りの姿を見ればそれがはっきりするはずだ。
 だからオレもいつも通りでいればいい。

 廊下に飛び出していって出迎えるなんてマネ、しない方がいい。


 オレはいつも通り、いつも通りと呟きながら待った。


 弘樹が変な目で見てるが気にしないでおこう。


 そして、教室に他の生徒に囲まれながら友たちが入ってくる。

 このままじゃあ全く友の姿が見えない。


 でもすぐに黒斗が道を作って、二人がオレ達の所に来た。



「一気に人気者だな、友。大変だっただろ?」

 弘樹が笑って友に話しかける。


「本当だよ。教室戻るのにも一苦労だ」

 そう言った友はいつも通りの黒ぶちめがね。
 可愛くはあるけど綺麗じゃない。


 オレはホッとした。

 ほら、やっぱり気のせいだ。

 さっきみたいにドキドキしない。


「でもこっちも微妙に大変だぜ? さっきから高志がおかしいんだよ」

「おかしくなんかねぇよ。変なこと言うな弘樹」

 そういつも通り返したが、友は不思議そうにオレを見た。


「でも確かにおかしいな。いつもなら真っ先にからかってくるのに」

 友はそう言ってオレを覗き込んだ。


「っ!!?」


 身長差のせいか、下から覗き込まれる格好になる。

 友が、上目遣いでオレを見ている。



 心臓がまた高鳴った。


「何だよ顔赤くして、本当にどっかおかしいんじゃないか?」

 そう言ったのは黒斗だった。



 オレは友から目が離せない。

 鼓動は、治まるどころか早まる一方だった。



「っっっオレ! トイレ行って来るわ」

 言うと同時にオレはその場を逃げ出す。


 またトイレの個室へ逆戻りだ。



 普段通りの友を見ても心臓は高鳴った。


 それはつまり……。



「ウソだろぉ……?」