聖石学園~意地悪で腹黒のナイト様~

 あたしは何も言うことが出来なくて、鏡越しにその一部始終を見つめていた。



「それにしてもセーラー服か……。なあ友、セーラー服のえりがどうしてこうV字になってるか知ってるか?」

 なんの前フリもなくそんなことを聞かれた。


 何でV字に?
 そんなの分かるわけないじゃない。


「し、知らないわよ」

 そう返事をすると、すぐ近くでフッと笑う音が聞こえた。


「この両側のえりに手を掛けて、破くためにあるんだぜ?」

 黒斗がえりに掛けた手を軽く引っ張る。

 そして耳元で囁いた。



「破いてみようか?」

「っ!?」


 黒斗が本気かどうかなんてどうでもいい。

 その楽しげな表情を鏡越しに見てしまった瞬間、あたしは固まってしまったから。



 そのままの状態で時が止まる。


 実際はそんなにたってはいないと思う。
 でも、あたしは黒斗の視線に金縛りにでも合ったかのような気分だった。

 やがて、笑いを押し殺した声が耳元で聞こえる。

 よく見ると、黒斗はプルプルと小刻みに体を震わせていた。



「っくっ……ックックック……ホントに破くわけねぇじゃん。これ特注だろ? 俺弁償なんてしたくねぇし」

 その黒斗の様子にあたしは目を瞬(しばたた)かせる。


 あれ?

 これって……からかわれたぁー!?


 怒りと恥ずかしさであたしの顔はカッと熱くなる。


「な、なによ! 破くためなんてテキトーなこと言って! 嘘つき!!」

「あ? それは本当だぜ?」


 あたしのせめてもの反撃に、黒斗は笑いを抑えて答えた。