聖石学園~意地悪で腹黒のナイト様~

「そんなこと言われても……」

 幼い頃から地味顔だと言われ続けてきた。
 どんなに頑張っても十人並みにしかならないだろうと思っていた。

 それを今更美人だなんて言われたって信じられるわけが無い。


 今のこの顔だって、メイクの賜物としか思えない。


「ったく……。これだから早くナイト見つけろってずっと言ってたのよ。……黒斗くんがナイトなってくれて本当に良かったわ」


 その言葉にあたしはピクリと反応したけど何も言わなかった。


 雪さん黒斗のこと信じきってる……。
 やっぱり言っても信じてもらえそうにないな……。

 
 
「雪さん、そろそろ時間だわ。行きません?」

 唐突に腕時計を見ながら怜さんが言った。


「あ、もうそんな時間?」

 途端に雪さんも慌て始める。



 今回のお披露目はメインがあたしなため、雪さんと怜さんは先に行って司会をしなければならない。

 本来こういうときの司会は生徒会とかの仕事なんだけど、ジュエルがやった方が盛り上がるから、とか言う理由でそうなったらしい。



「じゃあ友。後は着替えてウィッグつけてね。それで三十分後には講堂入り口にいること!」

 分かったわね、と雪さんはあたしの返事も聞かず更衣室を後にした。

 怜さんも「五分前行動よ?」なんて釘を刺しつつ雪さんを追って出て行った。