「……は?」



 何でそうなるのか。

 あたしは泣き出しそうだったのも忘れて聞き返す。



「イヤか?」


「ぁ……当たり前でしょう!?」

 あたしの強気はまた息を吹き返した。

「何でよりにもよってあんたにファーストキスやらなきゃ無いのよ!?」



 そう叫ぶと、黒斗はニヤリと笑って「へぇ……」と呟く。



 あ……これ、言わない方が良かった……?



「まあ、イヤなら助けた数だけ俺がお前にキスマークつけるってのでもいいけど?」


「どっちもイヤ!」

 即座に言った。

 当たり前でしょう!?



「ま、俺はどっちでもいいけどな」

 そう明るく言った黒斗は、やっとあたしから離れた。


 立ち上がった状態で、仰向けのままのあたしを見下ろす。



「どっちもイヤなら、他のヤツに襲われないよう頑張れよ」

 最後にそう言い残した黒斗は、「じゃあな」と部屋を出て行った。



 バタン、とドアの閉まる音がずっと耳に残る。




 あたしは動けず、今起こったことを考えていた。