あたしはそんな黒斗になんて言っていいか分からず黙る。

 そして何か言おうと言葉を探していると、黒斗は顔を上げ笑顔で言った。


「友、お前例の仕事請けろよ」

「へ?」


 黒斗が突然笑顔になったのにも驚いたけど、その言葉にさらに驚いた。


「いい、の……?」

 目を見開いたまま聞き返す。

「ああ。……拓馬のおかげで思いついたこともあるし、気にすんな」

 黒斗はそう言って、あたしの濡れて頬に張り付いた髪を耳に掛けてくれた。

 その優しい仕草に心がジーンと温かくなって、あたしは次の瞬間黒斗に抱きついていた。

「うわっ!? どうしたんだよいきなり」

「んー……へへっ。やっぱり黒斗のこと好きだなぁって思って」

「っ!? ……お前、結構恥ずかしいことサラッと言うよな」

 そう言った黒斗の表情は抱きついていたから見えなかったけど、きっと赤くなってる。


 それが尚更愛しくて、あたしはギュウッと腕に力を込めた。

 すると、黒斗も抱き返してくれる。

 優しく、あたしの肩と腰に腕を回した。


 あたしは目を閉じてこの幸せを噛み締める。




 そのままあたし達は、予鈴が鳴るまでドアの向こうの雨音を聞きながら、四日ぶりの甘い時間を過ごした……。