後夜祭を終えたあたしは制服に着替え、黒斗を教室に残し学園長室に向かった。


「結構遅くなっちゃったけど、お母さんまだ待ってるのかな?」

 廊下を歩きながら不安気に呟く。


 お母さんが教室に来て出て行ってから、既に三時間以上たっている。

 あれからずっと学園長室にいるのだとしたらずいぶん待たせてしまったことになる。


 でもお母さん本人が後夜祭終わってから来なさいって言ったんだし……。


「うん。ちゃんと待ってるよね、きっと」

 自分が言ったことを破るような人じゃないから。


 そう確認するように言い聞かせ、あたしは学園長室へと足を進めた。


 コンコン

「失礼します」

 他の部屋とは明らかに違う質のいいドアをノックする。

 するとすぐに「どうぞ」という若い男の声が返ってきた。


 その声に促されるまま、あたしはドアを開き中に入る。


「あら、もう来たの? 早かったわね」

 入ってドアを閉めると同時に、お母さんのそんな声が耳に届く。


 改めて中を見ると、お母さんはゆったりとソファーに座り学園長と歓談していたようだった。


 お母さんの向かい側に座る年若い学園長に視線を向けると、彼は笑顔であたしを迎え入れてくれる。