二人の男がかなり離れてから、俺はまだ目を丸くしている少女に顔を向けた。


「悪ぃな、勝手に彼氏のフリなんかしてよ。でもこれであんた家に帰れるだろ?」

「あ、はい……」

 イマイチ状況が理解できていないのか、少女は呆然としたままで頷く。


「じゃ、俺はこれで。もうナンパされねぇようにさっさと帰るんだぜ?」

 そう言い残して俺は立ち去ろうとした。

 でも……。


「あ、ちょっと待ってください!」

 少女が叫びながら俺の制服を掴んで引き止めた。

 見ると、少女は僅かに頬を朱に染めている気がした。


 もしかしたらソレは俺の願望からくる幻覚だったのかもしれないけど……。



「あ、あの。……お礼、そう! 何かお礼をさせてください!」

 少女は今思いついたかのようにそんなことを言い出した。

 俺はそれについて特には突っ込まず聞き返す。


「お礼?」

「そう! あたしに出来ることで何か……」

 懸命に何かしたいと言う少女に、俺は悪戯心が疼いた。


 ニヤリと笑い、少女が怯む前に頭を引き寄せてその唇にキスを落とす。