腕を引かれ、連れてこられたのは更衣室だった。
「ここなら誰も来ねぇよな」
黒斗はそう呟いてあたしを更衣室の中に入れ、自分も入ってカギをかけた。
「黒斗?」
黒斗の行動の意味が分からなくていぶかしげに聞いた。
すると、黒斗は楽しそうに目を細め、ダークな笑みをあたしに向けながら近付いて来る。
久々に見るその表情に、あたしは思わず後退りした。
ロッカーが背中について、それ以上後ろに行けなくなる。
黒斗はそんなあたしを追い詰めること自体を楽しんでいるかのようにジリジリと近付いてきた。
黒斗の両肘があたしの頭の脇につく。
キスが出来るんじゃないかってくらいに顔が近い。
ただでさえいつもより大人っぽくて色気のある今の黒斗。
ダークな笑みでその妖艶さはさらに増している。
そんな黒斗を間近にして、平気でいられるわけがない。
あたしは息を詰め、顔を真っ赤にさせて固まった。
「なあ、友……」
そんな状態なのに低音ボイスで囁かれ、腰が砕けそうになる。
実際に砕けなかったのは、続く黒斗の言葉が図星を指していたからだった。



