聖石学園~意地悪で腹黒のナイト様~

「大事な話だから、後夜祭が終わったら学園長室に来なさい。そのとき話すわ」

 そう言ったお母さんは普段の笑顔に戻ってコーヒーを注文した。


 あたしはその話とやらが気になったけど、後で話すと言われた以上もう突っ込んで聞けなかった。

 仕方なく注文されたコーヒーを出す。


 お母さんは数分でそのコーヒーを飲み干すと、早々に教室を出て行った。



「何? あれお前の母親?」

 お母さんが出て行った後、黒斗が近付いてきてそう聞いてきた。


「うん。……何か、後夜祭終わったあと話があるから学園長室に来いって」

 答えながら黒斗の顔を見上げる。

 その顔を見た途端、さっきの嫉妬心が蘇ってきてまたうつむく。


「話? 長いのか?」

「……多分、長くても30分くらいで終わると思う」

「そっか。じゃあ俺教室で待ってるから」

「……」


 胸の奥がモヤモヤする。

 今のいつも以上にカッコイイ黒斗を見ると、独り占めしたくて堪らなくなる。


 そんな気持ちを抑えるために、あたしは返事もせずただうつむいていた。


「……友? どうした?」

 当然ながら不審そうに聞いて来る黒斗。


 あたしは覗き込んでくるその顔からも視線を逸らした。