聖石学園~意地悪で腹黒のナイト様~

 何で近くの人に頼まないんだろう?


 少し疑問に思いつつ、そのテーブルまで行くと営業スマイルでにこやかに言った。

「ご注文は何ですか? ……ってあれ?」

 そこまで言ってからやっと気付いた。


「お母さん!?」

 そう、目の前に座っていたのはお母さんだった。


「あんたねぇ……。もっと早く気付きなさいよ」

 と、呆れのため息をつかれた。


「いや、ゴメン。ボーっとしててさ。……それより何でいるの?」

「何でって。いちゃ悪い?」

「いや、悪かないけど……」

 お母さんの反論に口ごもるあたし。



 そりゃ来て悪いわけじゃないけど……でも来るとは思わなかったんだもん。


「まあ、こっちも何も言わずに来たしね。……一度あんたのジュエル姿見ておきたくて。それに……」

 と止めて、お母さんは少し真剣な表情になった。
 そして続ける。


「あんたに話があってね……」

「話……?」

 その真剣な雰囲気に呑まれながらも聞き返す。


 この雰囲気には覚えがある。

 仕事をしているときと同じだ。


 あたしに助っ人に入って欲しいと頼んできたときもこんな顔をしていたけど、今回のはさらに真剣な感じがする。