案の定あたしは息を止めてさらに顔を赤くする。


 こんな大人っぽくてカッコイイ黒斗に迫られたら気絶する!


 きっと今甘い言葉でも囁かれたら本当に意識なくすと思う。

 それくらい今の黒斗は格好良かった。


 上手く息が吸えなくて、甘い台詞を囁かれなくても気絶しそうになった頃、隣から明るい声が発せられた。


「もう、友お姉ちゃんってば。お兄ちゃんのこと惚れ直したんじゃないの?」

 見ると、由理香ちゃんがニマニマとあたしを見て笑っている。

 あたしは何とも言えない表情で笑い返していた。


「あははは……」


 おかげで息の根止まらずに済んだけど、お姉ちゃんって何!?

 由理香ちゃんの中ではもうそういうことになってるの!?


「それじゃああたし他回るね。二人の邪魔しちゃ悪いし! じゃあ友お姉ちゃん、また会おう」

 あたしの疑問や戸惑いなんか知らずに、台風のように元気に由理香ちゃんは去っていった。


 あたしは呆然としながらも手を振って見送る。

 そしてその後姿が見えなくなった頃、黒斗が口を開いた。


「何? お前らいつの間に仲良くなってんの? ってか『お姉ちゃん』って……」

「あーそれは…………」

 説明しようとして止めた。

 今話すには長すぎる説明になりそうだから。