そう思ってホッとしていると、隣にいる男の子がボソッと呟いた。


「何だ、連れって彼氏だったんだ」


「え? うん、そ――」

 そう、と言おうとしたけど出来なかった。


 何故なら、男の子があたしの胸倉を掴んで引き寄せたから。

 何のマネか聞き返そうとする前に、彼の顔が近付きその唇が触れた。



 驚きは一瞬。

 すぐに離れようとその胸を押し返したけど、男の子の体はビクともしない。


「んー!」

 どうしようもなくてめちゃくちゃに暴れたら、やっと離れてくれた。


 あたしは驚きと怒りにも似た感情で男の子を睨み付ける。

「いきなり何てことするの!?」

 問い詰めると、男の子はフフンといった顔で答えた。


「ここまで連れてきてやった報酬、かな?」

「なっ!?」

 そうしてニッと笑った彼は「ごちそーさん」と言って去って行く。



 何?

 何なのあのオトコ!?


 そう思って口をカパッと開いて突っ立っていると、黒斗があたしのところまで来た。


「あ、黒――」

 黒斗の方に振り向き、しまったと思う。


 今の見られてた!?

 だって黒斗の表情、明らかに怒ってる!!


「友……」

「はい!」

「帰るぞ」

 黒斗はそう言うと、あたしの返事も聞かず腕を引っ張っていった。