「は~い」

 あたしは返事をして更衣室に向かった。


 正直、本当に有り難かった。

 だって、ジャージの下に着ているベストにまで水が染みてきていたから。



 胸を隠すための特注のベスト。
 普段は着心地いいんだけど、水に濡れるとかなり重い……。



 あたしは一般生徒の更衣室を通り過ぎ、少し奥のジュエル専用の更衣室に行く。

 三人分だから部屋は三畳程度しかない狭いところだけど、流石に他の生徒と一緒に着替えるわけにはいかないからここは我慢するしかない。

 確かベストの替えをロッカーに入れておいたはずだ。


「あ、あったあった」

 あたしは見つけたベストを着替えやすいようにロッカーの扉側に掛け、ジャージを脱いでいった。


「うわー、すっごい重い」

 ベストを脱いで手で持つと、その重さがよく分かる。

 その重いベストをとりあえず床に置き、新しいのを着ようとして手が止まった。



 今、あたしは濡れている。

 髪からはまだ雫がポタポタと落ちているし、ベストが吸いきれなかった水が体にも付着している。


「タオル、持ってくれば良かったなー……」

 そう呟いた後、コンコン、とドアの方からノックの音が聞こえた。