「うん、実は眼鏡お母さんに没収されて……」

「は? 何でまた」

 黒斗に聞き返されて、あたしは今朝お母さんに言われた事をそのまま言った。


「彼氏と旅行ならちゃんとオシャレして行きなさい。コンタクトは使い捨て多めに買っておいてあげたから! ……だって」

 事前にコンタクトまで買ってる所なんて、しっかりしててお母さんらしい。


「あはは……」

 と乾いた笑いをもらすあたし。


 そんなあたしを黒斗はまじまじと見ていた。


「ん? 何? あたし何かおかしい?」

「いや、おかしいんじゃなくて……。可愛い」

「えぅええ!?」


 あたしは黒斗の率直な褒め言葉に赤面した。


「そういえば私服で女らしい格好初めてだもんな……そういやあ、髪も伸びたか?」

「え? あ、うん。伸びてきたかも」

 あたしはまだちょっと頬を赤らめながらも、自分の髪をいじる。


 ……うん、やっぱり伸びてる。


「そろそろ切らないとなぁ」

 ぽつりと呟いた。

「良いじゃん、そのままにしておけば。……そのくらいの長さの方が色気出てイイし」

 そう言った黒斗は、目を細めニヤリと笑った。