「うん、そう」

 やっと話が戻ったことにホッとしながら、あたしは頷く。


「まあ、そのほうがいいんじゃない? 太ってるならまだしも、あんたスリムな方だし」

「う、う~ん……」

「何? まさか太ったの!?」

 ジトッとした眼差しで問い詰められた。


 お母さん、怖いよ……。


「微妙に……。食い込んじゃうほどじゃないと思うけど……」

「太ったことには変わりないのね?」

「うっ」


 ここまでしつこく問い詰めてくるなんて……。

 嫌な予感がする。


「ダイエットよ……」

「へ?」

「私の娘なら体型は維持しておきなさい!」

「ええ!?」

「その旅行はいつ?」

「え? 八月の終わり頃に行こうかと……」


 宿題とか気にしないでゆっくりしたいからってことでそうした。


「じゃあ十分時間はあるわね」

 そう言うとお母さんは、テーブルにバンッと手を突き立ち上がる。


「今日から旅行までの日数。私が決めたスケジュールをこなしてもらうから!!」

 ビシッと指を突きつけられたあたしは、気が遠くなるような思いだった。

 お母さんはやると言ったら徹底的にやる。


 自分の仕事があろうがびっしりあたしのスケジュールを組むだろう。

 しかもちゃんとやらなかったら罰までやらされる。



 あたしの夏休みは、黒斗との旅行以外は宿題とダイエットで終わりそう……。




 ああ、グッバイあたしの夏休み……。