「ワンランク上の大学目指すからって、『夏休みも勉強三昧だー』って言ってたのはあんたじゃない!?」

「でもよ、だからって雪に会えなくなるのは嫌だぞ?」

 イライラ気味の雪さんに怯むことなく、辰也先輩は真っ直ぐな視線で告げた。


 途端に雪さんの顔が赤くなる。これは暑さの所為じゃないはずだ。

「なっ! ばっ!? い、いつも会ってるでしょ!? 夏休みくらい我慢しなさいよ!」

「やだ。俺は一週間以上雪に会えなきゃ死ぬ」

 まるで子供のような駄々をこねる辰也先輩。

 雪さんは心底困ったというような顔になる。


「そんなこと言ったって……もうスケジュールいっぱいだし……ねぇ? 怜」

 と、雪さんは怜さんに助けを求めるかのように視線を送った。


「そうですね。私達のデビューが掛かってますし……」

 その怜さんの言葉を聞いてあたしは「え?」と思わず声を上げた。



「雪さんと怜さん、デビュー決まったんですか!?」


 前も言ったけど二人は歌手志望のタレントだ。

 そう、あくまでも“志望”の……。

 つまりまだ正式なデビューはしていない。


 歌手としてならそろそろデビューしてもいい頃じゃないかとは思ってたけど……。

「おめでとう御座います!」

 あたしは自分自身のように喜んだ。


 だって、昔から二人が歌手を目指していたのは知ってる。

 それに、今一緒の学園に入って同じ寮に住んで、身近でどんなに頑張っていたかを見てきたから。



 だから、二人の夢が叶ってくれるのは本当に嬉しく思う。