「っ!」



 こんなとき、あたしは黒斗から逃げ出したくなる。

 その台詞は、甘くてあたしの心を溶かしていくのに……。

 その眼差しとその妖艶な笑みは、サディスティックであたしの心をざわめかせる。


 甘さと意地悪。


 これを出されると、あたしは心も体もどうしようもなくなる。

 だから、逃げ出したくなるの。


 でも、そういうときに限ってあたしは黒斗に捕まっている状態なんだ……。



「黒斗……」

 黒斗はちゃんと答えないあたしの体を反転させ、向かい合う状態にした。

 そして右手であたしの後ろ頭を掴み、視線を合わせた状態で固定させる。


 顔が近付き、囁かれた。


「友、キスはいいか?」

 もう一度、聞かれる。


 あたしにはそれを拒む理由がなくて、「うん」と小さく答えた。


 ゆっくりと唇が触れる。

「友、口開け……」

 囁くような命令にも、あたしは素直に応じた。


 深まっていくキスに、あたしは意識を溶けさせ黒斗にしがみつく。

 黒斗もそんなあたしを支えるように腰を抱く。




 二人は、部屋の中が暗くなるまで唇を求め合った……。