「早めにメイク落とした方がいいですよ?」

「はい、そうします」

 苦笑気味の連先輩に返事をしつつ感謝した。


 何も、聞いては来ないんだな。

 聞かれても困るから、そのほうがありがたい。



 そうして話していると、更衣室のドアが開いた。

「おっ待たせー。って友、遅かったわね」

 雪さんが出てくると同時にあたしに気付く。

 そしてその雪さんに続いて怜さんも出てくる。

「あら、今来たのね。私達は先に行くわよ?」

「はい、分かってます」


 さっきと似たような会話をし、あたしは更衣室に入ろうとした。

 でもそのとき、辰也先輩の深~いため息が聞こえあたしはそっちを見る。


 辰也先輩は雪さんを見てため息をついたらしく、雪さんが不機嫌そうに辰也先輩に言った。

「何よ?」

「いや、お前が女っぽい格好するのなんて久々だからさ、もっと見てたかったなーと……」

「なっ!?」

 肩を落とし残念そうな辰也先輩に、雪さんは顔を真っ赤にして言葉を詰まらせた。


 辰也先輩はそれに気付かず続ける。

「だってさー。お前デートのときだって男っぽい格好だし……たまにはスカート姿も見たいっつーか……」

「なっ!? だって! スカートは動きづらいのよ!!」

「まあ、そういう雪も好きなんだけど、もうちょっと女らしくても……あーあ、雪が女らしくて可愛いのってベッドの中だけ――ぐはっ!?」

 辰也先輩の言葉は雪さんの鉄拳により中断された。

「み、皆がいる場所で言うことじゃないでしょう!? さっさと帰るわよ!」

 雪さんは真っ赤な顔で辰也先輩を引きずって行く。



「全く、先輩方はいつも騒がしいわね」

 そんな雪さん達を見て、怜さんがあらあらと呟いた。