あたし達はぎこちなくも手を繋いぎ、着替えるために更衣室へ向かった。


 黒斗はまだ複雑そうな顔をしてる。

 いきなり変われるわけないし、仕方ないと思う。



 でも、好きだって言ってくれたのは本当だと思うから……。


 だからあたしは黒斗に微笑んだ。

 黒斗も、はにかみながら微笑み返してくれた。



 幸せを……感じた……。





「あ、やっと来たのか?」

 更衣室の前では辰也先輩と蓮先輩が着替えている雪さんと怜さんを待っていた。

「何してたかは知らないけど、二人はそろそろ着替え終わるよ? 僕ら先帰ってるからね」

 と蓮先輩は笑顔で言った。


「あ、はい。分かってます――って、辰也先輩?」

 連先輩に返事をすると、何故か辰也先輩がいぶかしげにあたしの顔を覗き込んで来た。


 その近付いてきた辰也先輩を黒斗が押し返す。

「何してんですか? 辰也先輩?」

 ちょっと不機嫌そうだ。

「へ? あ、悪ぃ。何か目の端に黒いのついてたからさ。マスカラ取れてるんじゃねぇか?」


 あたしは「え?」と聞き返しつつ、あ、と思った。


 さっき涙を乱暴に拭ったとき取れちゃったんだ。