「殻から出てきてよ。ちゃんと人と向かい合って、その人のこと知って、そうしてから信頼出来るかどうか決めて! そうやって人と関わり合うことが……それが人間関係ってもんでしょう!?」

 あたしはもう、がむしゃらに話し出す。

「黒斗は最初から関わり合おうとしていないだけ! 高志にも、弘樹にも! あたしとだって、いざ向き合わなきゃならなくなったら逃げたじゃない!!」

「……友……」

「逃げないでよ。皆から……あたしから逃げないでよぉ……」

 最後の言葉は、あたしの心から……本心の言葉だった。


「友……」

 黒斗が、戸惑うような声であたしの名を呼び、片手であたしの頬を包んだ。

 泣いて熱くなった顔には、黒斗の冷たい手が心地よかった。


「友、お前は……なんでそこまで俺のこと……」

 困ったような表情で聞いてきた黒斗に、あたしは勢いをつけて答えた。





「黒斗のことが好きだからに決まってるじゃない!!」




 黒斗は驚いたのか、目を見開いて固まっている。


 あたしは乱暴に涙を拭い、立ち上がった。

 そして、上半身だけ起こした黒斗に語りかける。


「黒斗は、自分の事が知りたきゃ堕ちて来いって言ったけど、あたしは黒斗の所になんか堕ちて行かない」

 そう言って、片手を差し伸べた。

「だから、黒斗があたしのところに来て。あたしがいる場所まで這い上がってきて!」

 はっきりと言い切って、微笑んだ。

「這い上がってこれるまで、あたしが貴方の側にいるから。側にいて、希望の光で居続けるから……」


 そう、だって……。