十五分ぐらい経っただろうか、やっと話せるだけ息が治まってきたあたしは、黒斗をキッと睨んだ。
「あたし、黒斗に伝えたいこと……伝えなきゃいけないことがあるの」
「何だよ」
黒斗は不機嫌そうに聞いた。
「黒斗、あたしが何も知らないって言ったよね?」
「ああ、言った」
黒斗の目が細められる。
さっき感じた黒斗の闇が、また少し現れ始めた。
「そうだよ。あたしは黒斗のことなんか何も知らない! 黒斗じゃないから、黒斗の気持ちだって完全に理解出来ない!」
「……何が言いたいんだ?」
「人はさ、他人の気持ちを完全に理解できることは無いんだよ?」
「……」
「それでも、他人を心から信頼することが出来る。何でだと思う?」
その質問に黒斗は答えない。
でも、闇の流出が止まった気がする。
「その人と接して、その人と真正面から向き合って、悩み事を相談したり、ケンカしたり……そうやって少しずつその人のことを知っていくからだよ?」
黒斗は黙ったままだ。
だからあたしは続けて言った。
「……黒斗はバカだ」
「……んだと?」
「だって黒斗、真正面から向かい合って話をしたこと無いでしょ? それなのに、分かってもらえるわけないじゃない」
あたしはまた、涙が滲んできた。
「事故にあって、傷ついて……また同じように傷つきたくないから分厚い壁作って、殻に閉じこもってるだけでしょう!?」
涙が、流れた。



