「うん、まあこんなもんかしら」

 着替えて姿見で確認しながら雪さんが呟いた。

 そしてあたしと怜さんの方を振り返って見る。


「怜は髪結った方がいいかもね。後で色々試してみてよ」

「そうですね。試してみます」

 そう会話が成されると、次に二人の視線があたしに集まった。



「友はやっぱりウィッグつけたほうがいいですね」

「そうね、確か茶髪のウェーブがかったやつあったわよね? 長いの。それにしましょう」


 なんだか、勝手に決められた。

 でも反論する気にはなれない。

 だって明らかに二人のほうがファッションセンスはあるから……。

 そんな感じで衣装合わせも終わり、振り付けの練習へと向かった。




 弘樹に黒斗のことを頼まれてから約二週間。

 すぐにこの体育祭の準備が始まったため、何の進展もなく日々が過ぎていた。


 黒斗も相変わらずあたしから距離をとっているし、どう対処すれば良いのか分からなかった。


 とにかく、この体育祭が終わったら一度黒斗としっかり話し合おう。

 黒斗が何を思って今のようになったのか、何を思ってあたしから距離を置いてるのか、理由が分からないと対処の仕方も分からないから……。



 バタバタと忙しかった練習の日々も終わり、今日は待ちに待った体育祭。


 学園長の挨拶もそこそこに、ジュエルからの激励の言葉。

『皆さん、マナーを守り、楽しい体育祭にしましょう。頑張ってくださいね!』

 三人マイクの前で声をそろえて言うと、一気に歓声が上がる。


 そうして体育祭が始まった。