「ホラ、友! 衣装合わせに行くよ!?」

「は、はいぃ!」


 あたしは雪さんに引きずられるまま、更衣室へ向かった。



 最近は体育祭の準備に追われる毎日だ。

 こういう学園行事にはジュエルが欠かせないらしい。

 ちなみに今年の体育祭ではチアの格好をして生徒の士気を高めるんだとか……。


 ただその格好をするだけならここまで忙しくないのに、しっかりとプログラムの中に『チア・ジュエルの応援』というのが組み込まれている。

 そのため、やった事も無いバトンの練習やら、振り付けの練習を日々頑張っているんだ。


「友、早く歩きなさい」

 怜さんの厳しい叱咤(しった)の声が飛んでくる。

「は、はいぃ……でも、腕と足が筋肉痛で……」

「あんた普段からもうちょっと鍛えなさいよ」

 今度は雪さんに叱られた。

「うぅ……はい……」

 一応返事はしたものの、二人と一緒にしないで欲しいと思った。


 歌手志望の二人は放課後毎日の様に養成所で色んな訓練をしてる。

 そんな二人にとってはチアもそこまで難しいものじゃ無いみたい。


 でも……うん、足手まといにだけはならないように頑張ろう……。

「あ、蓮。そっちはヒマそうでいいわねぇ」

 更衣室前で蓮先輩の姿を見つけ、雪さんが皮肉たっぷりで呼びかけた。


「そうですね、ジュエルに比べたらヒマですね」

 雪さんの皮肉をものともせず、ニッコリと微笑む蓮先輩。


「そうね、今のうちにヒマを満喫していてね。当日には嫌ってほど働いてもらうから」

 連先輩以上に冷静にニッコリと微笑む怜さん。

 流石に怜さんには敵わないらしく、蓮先輩は「ははは」と乾いた笑いをもらしていた。