屋上のドアを開けると、一陣の風が吹いた。

 やっぱり屋上だけあって風が強い。


 あたし達はフェンスの下の段差に腰を掛け、話をした。


「話ってのはさ、黒斗のことなんだ……」

「黒斗の?」

「ああ……単刀直入に言うぞ。……黒斗、俺達のこと信用してないだろ?」

「っ!?」


 弘樹、気付いてたの?

 黒斗が皆に分厚い壁を作っていることを。
 皆と接してる黒斗は仮面を被った偽りの黒斗だってことを……。


「その、俺も気付いたのは最近なんだ。ほら、和子さんのことがあったとき……店の代金お前たちが払ってくれたんだろ? それに気付いて金返そうとお前ら追いかけたんだ……」

 あたしはそのときのことを思い出し、カッと顔を赤くさせた。

「見てたの……? あれ」


 あんな光景、弘樹に見られたなんて……!?



 羞恥(しゅうち)で穴があったら入りたい気分だったけど、弘樹の次の言葉がその気持ちを治めてくれた。


「いや、何してたかはよく見えなかったんだ。……でも、黒斗の声が聞こえたんだ……『弘樹に礼言われて照れくさそうにしてたのは、仮面を被ったいい子ちゃんの俺。本当の俺は何とも思っちゃいねぇんだよ』って……」

 なんで弘樹は、よりによってその言葉を聞いてしまったんだろう。


 
 確実、傷ついたよね……?


「ショックだった……。その言葉自体もだけど、それを聞くまで気付けなかった自分自身にも……」

 そして、弘樹は自嘲気味に笑う。

「小学校からずっと一緒で、ずっと友達だと思っていたのに……俺はあいつの変化に今更気付いたんだ……。友達失格だよ……」

「そんなこと!?」

 あたしはそう否定の言葉を言ったけど、それに続く慰めの言葉は思いつかなかった。