近くに来たとき、その人だかりを覗いてみた。


 何とか人の隙間から見えたのは、とっても可愛い美少女だった。


 黒い髪を肩口で切りそろえ、目元は二重に長い睫毛で可愛らしさを強調されている。

 通った鼻筋に形のいい唇。
 顎のラインまで完璧だ。


 はぁ~世の中にはこんな美少女がいるんだなぁ。

 でも何でこんな所にいるんだろう?

 こんな子が男子校の校門なんかにいたら、ナンパされまくるに決まってるのに……。


 その子を見た限りでは、ナンパされたくているようには見えない。

 それにしては表情が不機嫌だ。


「もー! あんた達どっか行ってよ! あたしはお兄ちゃん待ってるだけなんだから!!」

 そう叫ぶ声まで可愛らしい。


「あれ? 今の声……」

 近くにいた黒斗がそう呟いた。

 そして人だかりの中心を見て驚いた顔で叫ぶ。


「おまっ、由理香(ユリカ)じゃないか!?」

「あっ! お兄ちゃん!!」


 黒斗の知り合い?
 っていうかお兄ちゃん?

 兄妹ぃーーー!?



「あんた達どいて! あーったく、どけっつってんでしょー!」



 ……可愛い顔とは裏腹に口は悪そうだ。