でも、黒斗の言った台詞が、ひとつだけはっきりと聞こえてきた。


『弘樹に礼言われて照れくさそうにしてたのは、仮面を被ったいい子ちゃんの俺。本当の俺は何とも思っちゃいねぇんだよ』


 その言葉自体、ショックだったのもある。

 でも、きっと俺は黒斗がそんな事を言った理由を知っている……。


 多分……いや、絶対にあのときの事が原因だ。

 だって、あんな事があった後だったのに、あのときの黒斗は普通に明るかったから……。


 あの時、気付くべきだったんだ。


 なのに、誰一人気付くことは無かった。

 だからきっと、黒斗は今も闇の中にいるんだ……。


 もう、遅いのか?

 誰か、あいつを助けてくれる奴はいないのか……?


 俺はダメだ。

 黒斗がそうなった原因を知っているから。

 あの頃から、ずっと友達だったのに気付いてやれてなかったから……。


 黒斗は俺に仮面の顔しか見せてくれないのに……本当の黒斗に会うことすら出来ないのに、救い出す事なんか出来ない……。


 誰か……。


 誰か!!



 そこで思い切り目を瞑(つむ)ると、友の顔が浮かんだ。


 友?


 そうだ、少なくとも友には本性見せていたじゃないか!?




 ……友。

 お前に、希望を託してもいいかな……?