「あれは違うんじゃないの!?」

 組み敷かれることに慣れてしまったあたしは強気で聞き返した。

「ナイトとしてお前を守ったって事には変わりねぇじゃん」


 っこのっ、屁理屈を!


 そうは思いつつも黒斗に抵抗できるはずも無く、あたしは唇を奪われた。

「んっんんぅ!」

 言葉としては出ないけど、抗議の声を上げる。


 でも黒斗のキスは優しくて、やっぱりあたしはすぐに抵抗の意志をなくした。


 腕を掴んでいた黒斗の手があたしの手のひらを握る。

 あたしは息苦しさに耐えるようにその手を握り返した。


 そんな状態に、頭の片隅で恋人同士みたいだと思った。


 でも、あたし達は恋人同士じゃない。

 好き合っているわけでもない。


 何で、黒斗はこんな風に優しくあたしを扱うの?


 最初は優しさなんて欠片も無くて、無理矢理してきてた。

 今も無理矢理なのは変わりないけど、あたしに触れる手は優しくなった。

 今のキスも無理矢理で強引なのに、あたしの体の芯を温かく熱してくれるほどに優しい。



 ねえ、どうして?



 その疑問は、更に深くなったキスの所為で心の奥に消えてしまった……。