「それより……望くん」
「はい? 何ですか?」
「そいつ、邪魔じゃないのかい?」
と佐久間さんが指差したのは、私をしがみつくように抱きしめている朔夜だった。
「あ、あははは……」
私は何と答えるべきか分からなくて誤魔化すように笑う。
そんな私の頬や耳に、朔夜はキスをした。
佐久間さんに見せ付けるかのようにチュッと音まで立てて。
佐久間さんの頬がヒクリと引きつるのが見えた。
「朔夜……それは明らかにあてつけだな? 彼女もいない私に対するあてつけだな!?」
声が震えてる。
年甲斐もなく佐久間さんはちょっと泣きそうな顔をしていた。